年月をつなぐダッシュ(欧文組版の場合)
2000年5月12日制作 10月3日追記

こんな雑文でも一応著作権法で守られています。無断転載はしないでください。

 

 

欧文の組版で年月をハイフンまたはダッシュ(ダーシ)で結ぶ場合、左のどれが良いのでしょう?

1)はハイフンを使用
2)はハイフンの左右にスペースを入れたもの
3)は2分ダッシュを使用
4)は2分ダッシュの左右にスペースをいれたもの
5)は全角ダッシュをいれたもの
6)は全角ダッシュの左右にスペースをいれたもの

ボクは4)が良いように思うのですが、欧米ではどうしているのでしょうか?

追記1(2000年10月3日)

2000年5月13日,逆井 克己さんから次のようなご教示をいただきました。

---------------ここから---------------
私の目には 3) がいちばんまともに見えます。

手許の The Chicago Manual of Style (14th Edition) でも,5.115 に

The principal use of the en dash is to connect continuing,
or inclusive, numbers―dates, time, or reference numbers.
(The hyphen, not the en dash, is used between numbers that
are not inclusive; see 5.120.)

と書かれていまして,この記述に続けて


という例が載っています(A.M. P.M. はもちろんスモールキャップです。)
(オックスフォードルールでは小文字を使う=注・大熊)


翌日のメール

実は昨日書き忘れたのですが,May June July は普通省略しませんので,Jun. ではなく June としたほうがよいと思います。
---------------ここまで---------------


追記2(2000年10月3日)

2000年5月13日,家辺 勝文さんから次のようなご教示をいただきました。

---------------ここから---------------
「英文」組版では(スペースは)入れないでしょう。

この話題のついでに、仏文の場合、英文と少し違うので、フランス語の本をご覧になるとき、気を付けてみるとおもしろいかと思います

連続する期間、区間(何ページから何ページのようなもの)を表すのに英文組版では、en dash を使いますが、仏文では trait d'union、ハイフンであり、この文脈で、仏文組版で ハイフンと en dash を使い分けることはありません。Chicago が例示しているようなinclusive でない数字のつなぎ(電話番号の表記など)は、単に空白となります。




(日と月の間は空ける、septembre と 1 の間は空けない)


(ただし、手元の文献には、年月だけで期間を示す実例が見あたらず、あまり使わないようにも思う。)


(p. と数字の間は空ける)

電話番号

(架空、2桁ずつ区切って書く)


ただし、生没年に地名が併記されるときは、ハイフンの前後を空ける。


期間はハイフンでつなぐ場合は、両端が含まれる連続した期間ですが、「〜から〜まで」と言葉で表現したときは、フランス語ではあいまいです。

は、もともと「6月2日」が含まれない期間を指すのですが、終端を含むように使う例がなきにしもあらずなのです。
誤解を避けるために、終端を含むときは

と明示します。

箇条書きや、注記に tiret(em dash に相当)を使いますが、英文組版と違って、仏文では tiret と、続く文字の間は空けます。


***

端を含むか含まないか、という話題で少し脱線すると、日本語で「正の数」「負の数」というとき、英語で positive number 等というときも同じだと思いますが、ゼロは含みません。
フランス語で nombre positif, nombre negatif (e accentaigu)というときは、そのどちらにもゼロを含みます。
---------------ここまで---------------

追記3(2000年10月3日)

2000年5月29日,鰐原さんから次のようなご教示をいただきました。

---------------ここから---------------
はじめまして

いつも(といってもときどきですけど)貴ホームページを興味深く拝見させていただいております。

(中略)

さて、先ごろ欧文のダッシュやハイフンの使い分けをどのようにすればよいか,との例文が掲載されておりました。

(以下の文中で文字が半角の「ミ」と化けていたら,それは英文の半角ダッシュです。Osakaフォントでは英文の半角ダッシュがないので「ミ」に化けます。)


いわゆるnダッシュ(エヌ、つまり半角ですね)は、「to」にあたり、日本語の表記でいえば
「〜」に相当するときに使う、と確か以前PageMaker(Aldus社の時代)のマニュアルで読んだような記憶があります。
確認しようとしたところ、思い返せば1年ほど前、古いソフトの保管場所を確保できなくなり処分(つまりゴミ捨て)してしまったのでもう手元にありませんでした。お知り合いでPageMaker 3.5から4.5あたりを
まだお持ちのかたがいらっしゃればマニュアルを見せてもらってください。

私が仕事をもらっている外資出版社でも、PageMakerと同じ指摘というかルールです。
一応ネイティブスピーカー(アメリカ人のプルーフエディター)がチェックしてくれますので、そうなのではないかと思います。けれどもアメリカの出版物でも、nダッシュでなくハイフンを使っているものもあったりして、実のところ私にも確かなことは分からないのです。ネイティブであっても書誌学的な知識がなければ、本当は分からないのではないでしょうか。

まあ、あちらの本や雑誌にも結構いい加減な造りもあることではあるし……
英米のものをすぐ鵜呑み追従するのも変ですし、わからないままに組み版するのも仕事の品質に関わるのでいやな気持ちになるところです。

私は、番地などの表記にはハイフン、「〜」にあたるところではnダッシュとしています。

組み方は、スペースを入れないでベタで組んでいます。しかし、ダッシュが前後の文字とくっついてしまうように見えることが多いので、カーニングでほんの少しアキを入れています。
QuarkXPressで10から15ぐらい(この数値にはたいして根拠はありません。このくらいだといいかな、という私の超個人的な好みルールです)。

うろ覚えでのお便りでは申し訳ないので、オックスフォード・ルールをあたってみました(Rules for Compositors and Readers at the University Press Oxford. Thirty eight edition)。
邦訳は「オックスフォード大学出版局の表記法と組版原則」(1983年初版)という書名でダヴィッド社から出ています(現在も刊行しているかどうかは不明です)。
上記の訳本の中で次のような記述を発見しましたので、引用します。

  「日付けは、25 June 1978. と、日、月、年の順とする。月と年の間のカンマは省く。」
しかし、June 25, 1978と記述したとしてもあながち誤りではないようです。オックスフォード・ルールの作成者は、月、日、年の順の記述は「月で始めて日に戻り、そして年に及ぶべきではない」
との意見を採用したようです。


  「集約的な数では、from 280 to 300とするか、280ミ300とし、from 280ミ300とはしない」

  「数字の連続は、(中略)二分の罫(en rule)を用いる。そしてまた章の場合でも、Chapter IIIミVIIIとする」


上記のようなことを根拠に、私は二分ダッシュを使って、ベタ組みと少しカーニングあけ、としています。
したがって、貴ページの例文でいうと、(3)を採用することになりますが、これは見た目すごく格好悪い。
本文なみに小さめの文字で組むのであれば、そんなに違和感はないでしょうが、ショーやイベントのポスターとかチラシなら「→」や長い罫線などのデザイン的な視覚効果を使いたいところです。
そうでなければ、私は「From May 1990 to June 1991」の表記を提案すると思います。
(JuneをJun. と省略するのはよくないように思いますが、いかがでしょう?)

(以下略)
---------------ここまで---------------

ハイフンの前後にIllustratorで45のカーニングを入れました

たいへん勉強になりました。恥をかいたかいがありました。みなさま,ありがとうございました。
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