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「トリビアの泉」に「ガゼビア」が

こんな雑文でも一応著作権法で守られています。無断転載はしないでください。(2005. 4. 27)

2005年4月27日にフジテレビで放送した「トリビアの泉」のなかで、

「〜」の正式名称は「波ダッシュ」

というのがあった。このトリビア自体はよいのだが、どこだかの大学の教授が出て来て、「アー」とか「バキューン」とか音を伸ばす記号を「ダッシュ」と説明していた。これは長音記号(音引き)だ。
さらに「バキュ〜ン」などと「ダッシュの代わりに波ダッシュを使うと柔らかく感じますね」などと長音記号(音引き)の代わりに波ダッシュを使う例を20も披露し、恥の上塗りをした。
さっそくフジテレビに電話をして指摘したのだが、電話に出た制作の女性は「あ〜そうなんですか」とあまりありがたそうでも迷惑そうでも驚いた風でもなかった。
番組中、JIS X 0208の規格票を示していたが、「長音記号(音引き)」も「ダッシュ」も「波ダッシュ」と同じページに出ている。「長音記号(音引き)」は「波ダッシュ」の1行上、「ダッシュ」は14行下にある。

ついでに他のメディアで気になった誤りも書いちゃおう。

数年前になるが、TBSラジオの「土曜ワイド」で永六輔さんが「楷書、行書、草書の中で一番早くできたのが草書で次が行書、最後が楷書。柔らかいものがだんだん固まって最後に楷書ができた」と発言。これは気持ちはわかるが、ほとんど間違えている。
為政者が認めた正式書体を「正書(せいしょ)」といい、最初の正書は秦の小篆、次が漢の隷書、その次が唐の楷書である。正書はその3つしかない。で、それぞれの正書に行書や草書がある(小篆にはまだ草書といえるようなものがない。また中国統一前の殷(商)には甲骨文が、周には金文、春秋戦国時代には大篆などさまざまな書体があった)。つまり、小篆の正書と小篆の行書、隷書の正書と隷書の行書と隷書の草書、楷書の正書と楷書の行書と楷書の草書がある。くわしくは字体と書体の変遷 年表付き(pdf)をご覧いただきたい。永六輔さんに手紙でご指摘したところ、「文字についてのご教示ありがとうございました」と書かれた自筆のハガキをいただいた。サスガは永さんだ(余談だがジャニーズのデビュー曲を永さんが作詞しているのを最近知った。永さんは偉大だ)。

小学館のコミックス・細野不二彦『ギャラリーフェイク』の17巻に「トンパ・ミステリー」という話がある。贋作専門のギャラリーを経営する主人公のフジタが、中国人に「王義之の写しがある」といわれる。正しくは王〈羲〉之だ。まあこれは単純誤植としてまだ笑っていられる。「篆書から楷書が完成する過渡期にあって王〈義〉之の書は……」これは「隷書から楷書が完成する過渡期」でしょう。まあこれも我慢できる。さらにページを進めるとその「王〈義〉之の写し」が見せられるのだが、なんとその絵が「拓本」なのである。これは噴飯ものだ。拓本は印刷物だ。写しには違いないが。さらに「この写し、清の乾隆帝の時代のものですよ。」という台詞でとどめをさしている。もしそれが拓本ではなく写しだったとしても、唐代の模本ならともかく、何百年も経った清代になってからの写しなんてありがたくもなんともない。(^^;

このような例をあげたのは他人の間違えを糾弾しようというんじゃない。上記のメディアは、ふだん私が見たり聞いたりして「へ〜」っと感心しているものなのだが、自分の専門の分野のことになると、これだけの誤りに気がつく。ということは、ふだん感心しているものの中にも、たくさんの誤りがあるのだろう。たくさんの誤りが含まれていることを認識して、情報をすくうことが大切だと思った。

※王羲之の真筆はすべて唐の大宗皇帝の墓におさめられたと伝えられ、模本のみが伝わっている。